コラム
兼務役員の社会保険・雇用はどうなる?
2021.10.05
前回は「執行役員」の社会保険・雇用保険についてお伝えしましたが、今回は「兼務役員」についてお伝えしたいと思います。
「執行役員の社会保険・雇用保険はどうなる?」
→ https://gracepartners.jp/news/20210921/
兼務役員とは?
従業員から会社法における取締役の身分を有することになって、従業員と役員を兼務するような場合もあります。
たとえば、取締役や理事の立場にありながら、同時に部長や支店長等の身分を保つ方を見ることはないでしょうか。
このように両方同時に有する人のことを「使用人兼務役員」(以下、兼務役員)と言います。
このとき、注意したいのが雇用保険です。労働者としての身分もあるわけですから、そのまま雇用保険に加入できそうな気もしますが、そういうわけではありません。
兼務役員として雇用保険に加入するためには、「役員報酬」と「労働者としての給与」が明確に分かれており、さらに「労働者としての給与」の金額の方が高い必要があります。
また、役員としての代表権や業務執行権を有していないなど、労働者性が強い点もポイントとなります。まずはこの点を確認しましょう。
兼務役員として雇用保険に加入するためには、「兼務役員雇用実態証明書」と「兼務役員における証明書」をハローワークへ提出する必要があります。添付書類は以下のとおり、複数あります。
【添付書類】
・登記簿謄本 役員就任時のもの
・役員報酬規程 規程がない場合、給与及び役員報酬の決定文書
・貸金台帳 就任前後3か月(前1か月、後2か月)
(資格取得届と同時提出の場合は入社時以降すべて)
・ 出勤簿 就任前後3か月(前1か月、後2か月)
(資格取得届と同時提出の場合は入社時以降すべて)
・労働者名簿 労働基準法第107条、施行規則第53条により調整されたもの
・人事組織図 役員就任時のもの
入社と同時の場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」もあわせて提出します。
こうした手続きをきちんとしておくことで、兼務役員であった方が会社を退職する際は、雇用保険に加入している部分において、失業手当の対象となります。
兼務役員における社会保険についてはどうなるでしょうか?
社会保険においては、役員と従業員による区別はありません。そのため、総額が変わらなければ特段の変更手続きは必要ありません。
報酬・給与構成が大きく変わり、標準報酬月額が2等級以上変動する場合は随時改定に該当し、月額変更届を提出することになります。
今回は、使用人兼務役員における雇用保険、社会保険について確認をしました。執行役員と考え方が異なるところがありますので、ご注意ください。
人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木由美子
※ この投稿内容は、発行日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています