コラム

執行役員の社会保険・雇用保険はどうなる?

2021.09.21

 

近年、大企業に限らず執行役員制度を導入する企業が増えています。執行役員制度は、1997年にソニーが導入して話題となり、国内に広まってきました。

日本監査役協会の調査によると、2020年の監査役会設置会社の執行役員制の導入割合は、全体で66.1%、非上場企業で56.6%、会社法上の大会社以外で51.3%となっており、増加傾向にあるといいます。

今回は「執行役員」における社会保険・雇用保険はどうなるか、確認していきましょう。

執行役員とは

執行役員とは、役員と名がつくものの、会社法で定められているものではなく、あくまで社内の役職にとどまります。

会社法上で役員とされているのは、取締役、会計参与及び監査役となります。

企業によっては、執行役員が取締役を兼務している場合もあります。この場合、会社法上では役員として扱われます。

本来、取締役がもつ「意思決定および監督」と「業務執行」の役割を分け、「業務執行」を執行役員に任せることで、取締役が経営に専念できることを目的に設置されました。そのため、執行役員には経営に関する重要事項、方針に関する決定権限はありません。

執行役員の社会保険は?

委任契約の形で、執行役員を任命している場合は「労働者」となりません。そのため労働保険や社会保険の対象になりません。

ただし、会社の取締役で執行役員を兼ねている場合、労働保険は対象になりませんが、社会保険は原則として被保険者として取り扱われます。

一方、従業員が執行役員を兼ねている場合は、労働者として労働保険(労災保険・雇用保険)に加入でき、また社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となります。

たとえば、部長職等の従業員が執行役員に任命されたような場合、雇用保険においては従業員の身分を保ったままとなりますので、特に手続きを行う必要はありません。

社会保険に関しては、労働条件が大きく変動するような場合を除いては、特に社会保険の手続きを行う必要はありません。

しかし、給与が大きく上がり、標準報酬月額が2等級以上変動する場合は、随時改定に該当することとなり、月額変更届の手続きが必要となります。この点は、通常の従業員と取り扱いは変わりません。

従業員が執行役員を兼務することが多いと考えられますが、委任契約の場合であっても、実態としてみたときに労働者性が高いと判断される場合は、労働保険の対象となり得る場合があるので留意したいところです。

今回は、執行役員における雇用保険、社会保険について確認をしました。役員とつくことで分かりにくいところがありますので、くれぐれも注意しましょう。


人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子


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