コラム
【女性活躍推進法】 行動計画の策定ステップ
2022.01.06
●2022年4月1日より、女性活躍推進法に基づく行動計画の策定や情報公表などを義務付けられる対象が現在の従業員301人以上の企業から101人以上の中小企業までに拡大します。
そこで、行動計画の策定フローについて、以下ステップごとにご紹介します。これから策定する企業の方はぜひご参考にしてください。
ステップ1 自社の女性活躍に関する状況把握、課題分析
まず、自社の女性の活躍状況を基礎項目に基づいて把握します。
基礎項目(必ず把握すべき項目)は以下の4つです。
※(区)の表示のある項目は、雇用管理区分(正社員、契約社員、パートタイム労働者/事務職、技術職など)ごとに把握を行うことが必要
(1)採用した労働者に占める女性労働者の割合(区)
<計算方法>
直近の事業年度の女性の採用者数(中途採用含む)÷直近の事業年度の採用者数(中途採用含む)×100(%)
※把握が難しい雇用管理区分については、「労働者に占める女性労働者の割合」で代替可能
(2)男女の平均継続勤務年数の差異(区)
※期間の定めのない労働契約を締結している労働者及び同一の使用者との間で締結された2以上の期間の定めのある労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が対象
(3)管理職に占める女性労働者の割合
<計算方法>
女性の管理職数÷管理職数×100(%)
※「管理職」とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」にある労働者の合計
※「課長級」とは、以下のいずれかに該当する者
・事業所で通常「課長」と呼ばれている者であって、2係以上の組織からなり、若しくは、その構成員が10人以上(課長含む)の長
・同一事業所において、課長の他に、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「課長級」に相当する者(ただし、一番下の職階ではないこと)
(4)労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
<計算方法>
「各月の対象労働者の(法定時間外労働+法定休日労働)の総時間数の合計」÷「対象労働者数」
上記が難しい場合は[「各月の対象労働者の総労働時間数の合計」─「各月の法定労働時間の合計=(40×各月の日数÷7)×対象労働者数」]÷「対象労働者数」
※非正規雇用労働者も含めた全労働者の労働時間(高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者(労働基準法第41条の2第1項)は、健康管理時間)の状況を把握
事業場外みなし労働時間制の適用を受ける労働者(労働基準法第38条の2第1項)、専門業務型裁量労働制の適用を受ける労働者(労働基準法第38条の3第1項)、企画業務型裁量労働制の適用を受ける労働者(労働基準法第38条の4第1項)、管理監督者等(労働基準法第41条)、高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者、短時間労働者(パート・有期雇用労働法第2条)は、それ以外の労働者と区分して把握
「労働時間」及び「健康管理時間」の状況は、つぎの客観的な方法等より把握します。
・タイムカードによる記録
・パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録
●基礎項目に加えて選択項目(必要に応じて把握する項目)を活用することが、より深く課題を分析するために有効です。
選択項目は2つの区分があり、それぞれつぎのような項目があります。
1.女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
◆ 採用
・男女別の採用における競争倍率など
◆ 配置・育成・教育訓練
・男女別の配置の状況など
◆ 評価・登用
・各職階の労働者に占める女性労働者の割合及び役員に占める女性の割合など
◆ 職場風土・性別役割分担意識
・セクシュアルハラスメント等に関する各種相談窓口への相談状況など
◆ 再チャレンジ(多様なキャリアコース)
・男女別の職種又は雇用形態の転換の実績など
◆ 取組の結果を図るための指標
・男女の賃金の差異など
2.職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
◆ 継続就業・働き方改革
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合など
すべての選択項目および詳細は文末の厚生労働省のパンフレットにてご確認ください。
ステップ2 一般事業主行動計画の策定、社内周知、外部公表
一般事業主行動計画は、ステップ1を踏まえて、つぎの(a)から(d)を盛り込みます。
(a)計画期間(2025年度(令和7年度)までの期間で、各事業主の実情に応じて)
(b)1つ以上の数値目標
・常時雇用する労働者数301人以上の事業主については、2020年4月1日以降が始期となる行動計画を策定する際は、2つの区分ごとに、それぞれ1項目以上を選択して、2項目以上
・常時雇用する労働者数300人以下の事業主は、1項目以上
数値目標の項目は状況把握項目(基礎項目及び選択項目)です。すべての数値目標および詳細は文末の厚生労働省のパンフレットにてご確認ください。
(c)取組内容
(d)取組の実施時期
策定・変更した行動計画は、非正社員を含めた全ての労働者に周知し、外部に公表します。
社内周知は以下の方法があります。
・事業所の見やすい場所への掲示、電子メールでの送付
・イントラネット(企業内ネットワーク)への掲載、書面での配布など
外部公表は以下の方法があります。
・厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載
・自社のホームページへの掲載など
ステップ3 一般事業主行動計画を策定した旨の届出
行動計画を策定・変更したら、つぎの様式にて管轄の都道府県労働局に届け出ます。
・一般事業主行動計画策定・変更届の届出参考様式
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000713159.doc
・次世代法に基づく行動計画と一体的に策定、届出をする場合の届出様式
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000744481.doc
電子申請、郵送又は持参により届出が可能です。
ステップ4 取組の実施、効果の測定
定期的に数値目標の達成状況や、一般事業主行動計画に基づく取組の実施状況を点検・評価します。
点検・評価の結果をその後の取組や計画に反映させることが重要です。
●女性の活躍に関する情報は、外部に公表する必要があります。
・常時雇用する労働者数が301人以上の事業主については、2つの区分ごとに、それぞれ1項目以上を選択して、2項目以上
・常時雇用する労働者数300人以下の事業主は、1項目以上
情報公表の項目は2つの区分があり、それぞれつぎのような項目があります。
1. 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女別の採用における競争倍率
・労働者に占める女性労働者の割合など
2. 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
・男女の平均継続勤務年数の差異
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
・男女別の育児休業取得率など
雇用管理区分ごとに公表を行うことが必要な項目、派遣労働者を含めて公表を行うことが必要な項目があります。
また、一部の項目は、状況把握項目と定義が異なりますので注意が必要です。
すべての情報公表項目および詳細は文末の厚生労働省のパンフレットにてご確認ください。
行動計画と同じく厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社ホームページ等で公表し、求職者等が簡単に閲覧できるようにします。
情報公表の内容は、おおむね年1回以上更新し、いつの情報なのか分かるよう更新時点を明記します。
就職活動中の学生など求職者は、企業を選択する際に、公表された情報を参考にすることができます。
一方、情報を公表する企業側は、優秀な人材の確保や競争力の強化につながることが期待できます。
こうした行動計画は、形ばかりのものではなく、女性の活躍を推進していくために真剣に取り組んでいただくことが重要です。
女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定や情報公表について、詳しくは厚生労働省パンフレットをご参照ください。
[女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!]
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000614010.pdf
人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子
※ この投稿内容は、発行日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています