コラム

2022年10月から適用拡大、パート・アルバイトの社会保険

2022.01.28

●2022年10月から、段階的にパート・アルバイトなどで働く従業員の社会保険の加入要件が改正され、適用が拡大されます。

常時労働者が500人以下の事業所は、改正の内容を把握し、自社が対象となる場合は、対応について検討していきましょう。

 

【社会保険の加入要件】

まず、原則的な社会保険の加入要件について確認しましょう。

パートタイマー・アルバイト等といった名称で働いている場合であっても、事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となります。

常用的使用関係の考え方については、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上であるかどうかで判断します。

例えば、フルタイムの正社員が1週40時間および1か月20日とすれば、1週30時間および1か月15日働く場合に加入対象となります。

 

では、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1カ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合は、一切対象とならないのでしょうか。

そのような場合であっても、現行において、次の5要件を全て満たす方は、「短時間労働者」として被保険者になります。

 

(1)週の所定労働時間が20時間以上あること

(2)賃金の月額が8.8万円以上であること

(3)雇用期間が1年以上見込まれること

(4)学生でないこと

(5)特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること(国、地方公共団体に属する全ての適用事業所を含む)

 

上記(5)が少し難しい表現となっていますが、「特定適用事業所」とはわかりやすくいうと、常時500人を超える適用事業所を意味します。

この場合、事業主が同じ一または二以上の適用事業所の被保険者(短時間労働者を除く)の総数で判断します。

「任意特定適用事業所」とは、厚生年金保険の被保険者数500人以下の企業に属する適用事業所で、短時間労働者が社会保険に加入することについての労使合意を行った事業所を指します。敢えて申請をしていない事業所は多いことでしょう。

 

 

【2022年10月からの改正ポイント】

 

2022年10月1日から、特定適用事業所の適用要件が500人を超える適用事業所から「100人を超える適用事業所」へ改正されることになりました。

常時従業員数101人以上の事業所で働く場合、以下の要件を満たせば、社会保険に加入することになります。

 

<チェックポイント>

□ 週の所定労働時間が20時間以上ある

□賃金の月額が8.8万円以上である

□ 2ヵ月を超える雇用の見込みがある

□学生でない

 

注意したいのは、勤務期間が、継続して雇用期間が1年以上見込まれることから、「継続して2カ月を超える雇用の見込みがある」ことに変更されている点。要件が緩和されることで、対象者が広がります。

さらに、2024年10月以降は、事業所の規模が「常時51人以上」に拡大されます。

 

 

【自社が対象となる場合にすべきこと】

 

2022年10月から新たに特定適用事業所となる事業所については、以下の準備が必要となります。

 

(1)新たに被保険者となる短時間労働者の把握

短時間労働者で、被保険者となっていない従業員等の労働条件を確認する必要があります。

 

(2)従業員への説明

これまで配偶者の扶養範囲内で労働条件を抑えて働いていた従業員等へ、2022年10月以降は上記の労働条件によって社会保険の被保険者となることを説明いただく必要があります。

その際、社会保険加入のメリットやそれに伴う働き方の変化の必要性について、事業主が従業員に説明することは、とても大切です。

 

※働き手のメリットについては、こちらのブログもご参照ください。

https://www.workstyle-blog.jp/20220126/part-052/

 

(3)2022年10月以降の資格取得届の準備

上記(1)(2)の確認の結果、新たに被保険者となる従業員に対する資格取得の届け出を2022年10月から行うことになります。事前に作成して、スムーズに保険証を交付できるように準備しておきましょう。

 

 

人事労務コンサルタント/社会保険労務士

佐佐木 由美子

 

※ この投稿内容は、発行日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています