コラム

年次有給休暇5日の取得義務、管理簿の作成は大丈夫?

2022.11.17

●厚生労働省の調査によると、2021年の1年間における年次有給休暇の平均取得率は58.3%。1人平均付与日数は17.6日、うち平均取得日数は10.3日ですから、諸外国と比べて決して多くはありません。

年次有給休暇は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、労働者が請求する時季に与えることが原則とされています。

しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらいなどから、取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

そこで、2019年4月から「年5日の年次有給休暇の確実な取得」がすべての事業主に義務付けられました。それでもなお、年休取得率は全体として大きく上昇していない状況です。

 

ちなみに今年、年次有給休暇に関連して書類送検された事案もあります。

労働基準監督署の求めに応じ、年間5日間の年次有給休暇を取得できていない労働者が複数人いるにもかかわらず、「全員取得できている」と虚偽の内容を記載した有給休暇管理簿を提出したというもの。

虚偽の陳述はもってのほかですが、いざというときのために、年休管理がきちんとできているか確認しておくことをおすすめします。

 

●年次有給休暇に関しては、労働者を雇用するすべての事業所に関わるものです。

ここで改めて、ルールをおさらいしましょう。

 

【対象者は?】

年5日の年次有給休暇の取得義務が生じるのは、年休の付与日数が年「10日以上」ある労働者です。管理監督者も当然含まれますし、パートやアルバイトについても、年10日以上発生していれば対象になります。

 

【いつまでに?】

年次有給休暇を付与した日(基準日)から「1年以内」に、5日取得させる必要があります。

 

【時季指定の方法は?】

時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければなりません。できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。

 

【時季指定しなくてよいのは?】

すでに5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はありません。

 

【管理簿の保存期間は?】

使用者は、労働者ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、「3年間」保存しなければなりません。

管理簿は取得状況の把握を目的としたもので、フォーマットが決まっているわけではありません。会社で自由に作成してもらって構いませんが、次の3項目は盛り込んでおく必要があります。

・基準日(付与日)

・取得日数

・年次有給休暇を取得した日付

 

●休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)であるため、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載する必要があります。

使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合は、30万円以下の罰金に処せられる場合があります。就業規則を長らく改定していない場合は、くれぐれもご注意ください。また、年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、対象となる従業員1人につき、30万円以下の罰金が科される場合があります。

以上のことから、単に5日取得というだけでなく、年次有給休暇の取扱いについて不備がないか、この機会にぜひご確認いただけたらと思います。

 

人事労務コンサルタント/社会保険労務士

佐佐木 由美子

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