コラム
月60時間超の時間外割増率の引上げ(2023年4月改正)
2022.06.23
●こんにちは、グレース・パートナーズの佐佐木由美子です。
紫陽花が美しい時期になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、今回は中小企業における時間外労働の割増率が引き上げられる改正について取り上げます。
●2023年4月1日から、中小企業において、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます。
現在(2023年3月31日まで)は、1か月の時間外労働が60時間を超える場合も、中小企業において割増賃金率は25%でよいことになっています。
ただし、大企業については、月60時間を超える場合は50%以上の割増率が義務付けられています。中小企業においては、事実上この引上げが猶予されていました。
ここでいう中小企業とは、(1)資本金の額又は出資の総額、または(2)常時使用する労働者数において、以下の基準を満たすかどうかで判断されます。
【小売業】 (1)5,000万円以下 または (2)50人以下
【サービス業】 (1)5,000万円以下 または (2)100人以下
【卸売業】 (1)1億円以下 または(2)100人以下
【上記以外のその他の業種】(1)3億円以下 または(2)300人以下
●具体的に、2023年4月1日から労働させた時間が割増賃金の引上げ対象となります。
月60時間を超える時間外労働とは、法定労働時間(原則1週40時間、1日8時間を超える労働時間)を超えるものを指します。
時間外労働が恒常的に多い事業所は、特にご注意ください。
深夜労働(22時~5時)の割増率は変わりませんが、月60時間を超える時間外労働が深夜の時間帯にある場合、
深夜割増賃金率25% + 時間外割増賃金率50% = 75%
となります。
ところで、月60時間の時間外労働の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれません。法定休日に労働した場合の割増率は35%となります(変更ありません)。
ただし、法定外休日に行った労働は60時間超に含まれるので、ご留意ください。
たとえば、法定休日を日曜日と定めている場合で、所定休日の土曜日に5時間労働させたときは、この5時間は月60時間を超える時間外労働に含めて計算します。
なお、月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するために、引上げ分の割増賃金を支払う代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することもできます。
割増賃金率の引上げに合わせて、今後は就業規則(賃金規程)の変更が必要になります。
まだ少し先になりますが、時間外労働が60時間以下の場合と、60時間超の場合における割増賃金率をそれぞれ規定する必要があることを覚えておいてください。
人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子
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