コラム
スポットワーカーを活用する際の留意点
2025.09.26
●昨今は、人手不足で採用が難しい……という一方で、どうしても人手が欲しいときもあります。
そうしたとき、一時的にスポットワーカーを活用する企業も増えています。
もちろん業種・仕事内容によって難しい場合もありますが、特に飲食業や小売業、宿泊業、配送・物流・運輸業などで活用される事例が見られます。
「スポットワーク」とは、短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くことで、雇用仲介を行う事業者が提供する雇用仲介アプリを利用して、マッチングや賃金の立替払を行うケースが主流を占めています。
アプリを用いて、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募し、面接等を経ることなく、短時間にその求人と応募がマッチングするのが一般的といえます。
働き手からすれば、空いた時間を有効活用できるうえに気軽に応募できるというメリットもあり、新たな働き方の一つとして注目されています。
その一方で、雇用仲介アプリを通じて働く労働者から賃金不払や求人内容と実際の労働条件(業務内容・賃金等)が異なるなどの相談が全国の都道府県や労働基準監督署に多く寄せられています。
そのため、雇用仲介業者に任せきりにするのではなく、スポットワーカーを利用する場合は募集する企業サイドにおいても、労務管理における一定の知識が必要となります。
●労務管理の注意点について確認おきましょう。
まず、スポットワークは、事業主とスポットワーカーが直接労働契約を締結することとなり、労働基準法等を守る義務は、労働契約を締結した事業主に生じます。
労働契約は、労働者が事業主に使用されて労働し、事業虫がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び事業主が合意することによって成立します(労働契約法第6条)。
労働契約の成立時期は個別の具体的な状況によりますが、原則として、労働契約の成立をもって労働関係法令が適用されることになります。
労働契約が成立すると、就業開始前に労働条件を明示しなければなりません。
労働条件通知書の交付は、スポットワーク仲介事業者が代行してくれる場合もありますが、交付は事業主の義務ですので、きちんと交付されているか、その内容は適切であるかきちんと確認する必要があります。
一旦確定した労働日や労働時間等の変更は、労働条件の変更に該当し、事業主とスポットワーカー双方の合意が必要です。
「急に仕事がなくなった」「お客さんが少ないからもう帰っていい」など、スポットワーカーだからと一方的に労働条件を変更することは認められていません。
労働契約成立後に、事業主の都合で丸一日の休業、または仕事を早上がりさせることになった場合は、労基法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」となり、休業手当の支払いが必要となります。
事業主の指示により、就業を命じた業務に必要な準備行為(指定の制服への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(掃除等)を就業先内において行った時間は労働時間にあたります。
こうした行為が発生する場合は、求人の際に、これら着替え等の時間も含めて始業・終業時刻の設定をするようにご留意ください。
また、スポットワーカーが通勤の途中または仕事中にケガをした場合は、就労先の事業主が労災保険の手続を行うこととなります。
そのため、労働保険・年度更新においても、スポットワーカーを利用する場合は、賃金の算定に含める必要がある点にも注意が必要です。