コラム
改正育児・介護休業法のポイント【2025年4月】
2024.06.24
●子育てや介護支援をより一層拡充させるために、5月31日に改正育児・介護休業法が公布されました。
今回は、改正内容のポイントについてお伝えします。
1.子の年齢に応じた柔軟な働き方に関する措置
男女ともに仕事と育児を両立できるようにするため、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置が拡充されます。
3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、「柔軟な働き方を実現するための措置」を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付けています。
【柔軟な働き方を実現するための措置とは?】
以下のうち、2以上の制度を選択して措置する必要があります。
・始業時刻等の変更(時差出勤やフレックスタイム制等)
・テレワーク
・保育施設の設置運営等
・新たな休暇の付与
・短時間勤務制度
テレワークは月10日、新たな休暇の付与は年10日、原則時間単位での取得を可能とすることが想定されていますが、各選択肢の詳細については、今後の省令等で定められることになっています。
事業主が措置を選択する際は、過半数組合等からの意見徴収の機会を設ける必要がある点に留意が必要といえるでしょう。
また、労働者に対する個別の周知・意向確認の措置も設けられていますが、それらの方法についても今後省令により、面談や書面交付等とされる予定となっています。
施行日については、公布後1年6か月以内の政令で定める日とされています。
2.育児のための所定外労働の制限の対象拡大【2025年4月1日施行】
現行では、育児のための所定外労働の制限については、3歳未満の子を養育する労働者が対象となっています。
改正後は、対象となる労働者の範囲を『小学校就学前の子を養育する労働者』に拡大されます。
3.育児のためのテレワーク導入が努力義務化【2025年4月1日施行】
3歳に満たない子を養育する労働者が『テレワーク』を選択できるように措置を講ずることが事業主に努力義務化されます。
4.子の看護等休暇【2025年4月1日施行】
「子の看護休暇」の名称が『子の看護等休暇』に変更となります。「等」という言葉が加わることで、取得事由が広がります。
対象となる子の範囲については、現行の小学校就学前から、『小学校3年生修了時』まで延長。現行では、子が病気だったり予防接種や健康診断を受けたりする場合の取得事由が認められていますが、これらの事由に加えて、感染症に伴う学級閉鎖や入学・卒業式など行事参加等の場合も取得可能になります(詳細はさらに省令で)。
また、労使協定に基づき除外する労働者の範囲について、『引き続き雇用された期間が6か月未満』の要件が撤廃されます。
したがって、労使協定の締結により除外できる労働者は、週の所定労働日数が2日以下の者のみとなります。
5.個別の意向の聴取・配慮
妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮が事業主に義務付けられます。
具体的な配慮の例としては、子に障がいがある場合やひとり親家庭の場合などで本人の希望があるときに、自社の状況に応じて勤務時間帯・勤務地にかかる配置や業務量の調整、両立支援制度の利用期間等の見直し、労働条件の見直し等を行うことが想定されます。
なお、この改正については、公布の日から起算して1年6か月以内の政令で定める日に施行されます。
6.300人超の企業に公表義務【2025年4月1日施行】
現行においては、従業員数1000人超の企業が対象となっていますが、改正後は従業員数300人超の企業に、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。
育児休業等とは、育児・介護休業法に規定する育児休業、出生時育児休業(産後パパ育休)をはじめ、3歳未満の子を育てる労働者に時短勤務措置を講じない場合の代替措置、小学校就学前の子を育てる労働者に関する努力義務の規定に基づく措置として育児休業に関する制度に準ずる措置を講じた場合の休業が含まれます。
7.介護離職防止のための個別の周知等【2025年4月1日施行】
現行では、40歳に達すると介護保険料が給与から天引きされるようになります。
介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供を行うことが事業主の義務となります。
仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備や、介護に直面した旨の申出をした労働者に対して個別の周知・意向確認の措置も義務化されます(詳細は省令)。
また、要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように事業主に努力義務化されます。
なお、『介護休暇』については、引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みが廃止されます。
適用除外の労使協定を現行において締結している事業主は、『子の看護等休暇』と合わせて対応する必要があるでしょう。
●多くが2025年4月に施行となるため、今年度内に就業規則(育児・介護休業規程)等の改定が必要となります。
大枠の改正ポイントを踏まえ、今後の省令や指針で定められる詳細についてキャッチアップしていくことが肝心です。
このほかにも、共働き・共育ての推進として、両親ともに育児休業を取得した場合に支給する『出生後休業支援給付』および育児期に時短勤務を行った場合に支給する『育児時短就業給付』の創設などもあります(雇用保険法等)。
育児や介護に関しては改正の多い分野となりますが、それだけ社会からのニーズが高いともいえるわけで、企業側としてもしっかりと対応していく必要があるといえるでしょう。
人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子
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