コラム

中小企業必見、育休中等業務代替支援コースの新設

2024.01.19

●中小企業では、人手が足りないことなどから育児休業の取得のためらってしまうことも少なくありません。

そこで、中小企業事業主を対象に、育児休業や育児短時間勤務を取得・利用する方の業務を代替する体制整備に対する支援を強化するため令和6年1月から両立支援等助成金に「育休中等業務代替支援コース」が新設されました。

●助成金を大別すると、育児休業等を取得する周囲の労働者に手当等を支払って代替させた場合(手当支給等)と、代替する労働者を新規雇用(または新規の派遣受入れ)した場合の2つがあります。

まず、手当の支給についてみていきましょう。

手当支給等については、(1)育児休業を取得する労働者の代替のケースと、(2)育児短時間勤務を利用する労働者の代替のケースがあります。

 

(1)育児休業の手当支給等

 

【主な要件】

1.育児休業取得者や業務代替者の業務の見直し・効率化を行う

2.代替業務に対応した手当等の制度を就業規則等に規定する

3.育児休業取得者に7日(うち所定労働日が3日)以上の育児休業を取得させる

4.3の育児休業中の業務代替期間について、手当等による賃金増額を行っている

・手当は代替内容を評価するものであり、労働時間に応じて支給される賃金でないこと

・手当総額で1万円以上支給していること(最低支給額の基準)

※1か月未満の場合は、1日あたり500円と比較して低い方を基準とする。

5.3の育児休業期間が1か月を超える場合、育児休業終了後に原則として原職等に復帰させ、3か月以上継続雇用する(就業規則にも原職等復帰を規定化する)

 

【助成額】

対象育児休業取得者1名あたり、以下1,2の合計額を支給。

 

1.業務体制整備経費:5万円

※育児休業期間が1か月未満の場合は2万円

2.業務代替手当:業務代替者に支給した手当の総額の3/4<プラチナくるみん認定事業主は4/5>

※手当の対象人数に関わらず、支給総額を対象として計算。10万円/月が助成金の上限

※代替期間12か月分まで対象

 

・有期雇用労働者加算

対象育児休業取得者が有期雇用労働者の場合に、支給額に1人当たり10万円を加算

※業務代替期間が1か月以上の場合のみ対象。

・育児休業等に関する情報公表加算

自社の育児休業取得状況等に関する情報を公表した場合、支給額に1回限り2万円を加算

 

(2)短時間勤務の手当支給等

 

育児短時間勤務を利用する労働者の代替をする人に手当を支給した場合で、これまでになかった内容です。

 

【主な要件】

1.制度利用者や業務代替者の業務の見直し・効率化を行う

2.代替業務に対応した手当等の制度を就業規則等に規定する

3.制度利用者に1か月以上の育児のための短時間勤務制度を利用させる

※1日所定労働時間7時間以上の労働者が、1日1時間以上短縮した場合が対象

4.3の制度利用期間中の業務代替期間について、手当等による賃金増額を行っている

・手当は代替内容を評価するものであり、労働時間に応じて支給される賃金でないこと

・手当総額で3千円以上支給していること(最低支給額の基準)

※1か月未満の場合は、1日あたり150円と比較して低い方を基準とする。

 

【助成額】

対象制度利用者1名あたり、以下1,2の合計額を支給。

1.業務体制整備経費:2万円

2.業務代替手当:業務代替者に支給した手当の総額の3/4

※手当の対象人数に関わらず、支給総額を対象として計算。3万円/月が助成金の上限。

※子が3歳になるまでの期間が対象(支給申請は1年ごと)。

 

・有期雇用労働者加算

対象制度取得者が有期雇用労働者の場合に、支給額に1人当たり10万円を加算

※業務代替期間が1か月以上の場合のみ対象。

・育児休業等に関する情報公表加算

自社の育児休業取得状況等に関する情報を公表した場合、支給額に1回限り2万円を加算

 

〇新規雇用

育児休業を取得した労働者が行っていた業務を代替する労働者を新規に雇い入れた場合(新規の派遣受入れを含む)に、業務を代替した期間の長短に応じた額を支給されます。

 

【主な要件】

1.育児休業取得者の業務を代替する労働者を新規に雇い入れる(新規の派遣受入れを含む)

2.育児休業取得者に7日(うち所定労働日が3日)以上の育児休業を取得させる

3.1で雇い入れた労働者(下記に該当)が、2の育児休業期間中に業務を代替する

・育児休業取得者と同一の事業所及び部署で勤務している

・所定労働時間が育児休業取得者の2分の1以上である

4.2の育児休業期間が1か月を超える場合、育児休業終了後に原則として原職等に復帰させ、3か月以上継続雇用する(就業規則にも原職等復帰を規定化する)

 

【助成額】

対象育児休業取得者1名につき、「育児休業期間中に業務代替した期間」に応じて以下の額を支給。

7日以上14日未満 :9万円 <11万円>

14日以上1か月未満 :13.5万円<16.5万円>

1か月以上3か月未満:27万円 <33万円>

3か月以上6か月未満:45万円 <55万円>

6か月以上 :67.5万円<82.5万円>

 

※<>内の額は、プラチナくるみん認定事業主への割増支給額。

※7日以上の育休は3日以上、14日以上の育休は6日以上が所定労働日であることが必要

 

・有期雇用労働者加算

対象育児休業取得者が有期雇用労働者の場合に、支給額に1人当たり10万円を加算

※業務代替期間が1か月以上の場合のみ対象。

・育児休業等に関する情報公表加算

自社の育児休業取得状況等に関する情報を公表した場合、支給額に1回限り2万円を加算

 

支給額には、上限が設けられています。上記の助成金、手当支給等(育児休業)と(短時間勤務)、新規雇用(育児休業)全てあわせて

・1事業主1年度につき対象育児休業取得者と制度利用者の合計で10人まで

・初回の対象者が出てから5年間

が上限となっています。

 

ただし、初回の対象労働者が生じるまでにくるみん認定・トライくるみん認定を受けている事業主は、「令和11年3月31日までに合計50人まで」となります。

上記の要件以外にも、詳しい支給要件がありますので、申請を検討される場合は、管轄の都道府県労働局へ確認するか、専門家に相談されることをおすすめします。

短時間勤務に関しては今月から新設されたばかりということでまだあまり知られていませんが、こうした国からの助成も活用し、中小企業におかれましても育児と仕事の両立支援を進めていただければと思います。

 

人事労務コンサルタント/社会保険労務士

佐佐木 由美子

※ この投稿内容は、発行日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています