コラム
定年再雇用後に無期転換の申出があったら?
2023.12.05
●定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、「65歳までの定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する必要があります。(高年齢者雇用安定法第9条)
定年年齢を65歳以上70歳未満に定めている事業主又は継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、以下のいずれかの措置を講ずるよう努める必要があります。(高年齢者雇用安定法第10条の2)
1)70歳まで定年年齢を引き上げ
2)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入(他の事業主によるものを含む)
3)定年制を廃止
4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
たとえば、あなたの会社が定年年齢を60歳と定め、65歳まで継続雇用制度を導入しているとしましょう。
定年後は、1年ごとの有期雇用契約で嘱託社員として雇用契約を結ぶとします。
その制度を利用して、65歳となった嘱託社員が、仮に「無期転換の申し込み」をしたとしたら、どのように対応するか、考えたことはあるでしょうか?
無期転換ルールとは、同一の使用者との間で締結・更新された有期労働契約の通算契約期間が5年を超えた場合に、有期契約労働者が無期労働契約への転換を申し込んだ場合は、現に締結している有期労働契約の契約期間の満了後に無期労働契約が成立するというもの。
そうした制度があることを知っている嘱託社員が、無期転換の申し込みをされるケースもあるかもしれません。
●無期転換ルールの適用により、通常は定年後引き続き雇用される有期雇用労働者についても無期転換申込権が発生しますが、有期雇用特別措置法により、
・適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で
・定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)
については、無期転換申込権が発生しないとする特例が設けられています。
特例の適用に当たり、事業主は本社・本店を管轄する都道府県労働局に認定申請を行う必要があります。
こうした認定申請を行っていない場合は、特例の適用を受けることはできません。
そのため、今後そうしたケースが考えられる場合は、「継続雇用の高齢者にかかる認定申請(第二種計画認定申請)」について、きちんと検討しておく必要があります。
この特例の対象となるのは、定年後、同一事業主に引き続き雇用される有期雇用労働者です。
高年齢者雇用安定法に規定する特殊関係事業主(いわゆるグループ会社)に定年後引き続いて雇用される場合も対象となります。
ただし、定年後、グループ会社ではない企業に再就職した場合は特例の対象とならず、通常どおり無期転換ルールが適用されます。
●近年は人手不足もあって、定年年齢を引き上げる動きもありますし、賃金体系を含めて高齢人材の活用を進めるケースもあります。
そのため、あえて継続雇用の高齢者の特例は適用する必要はない、と判断される企業もあるでしょう。
このあたりについては、企業ごとに考え方が異なってくる部分になりますので、ぜひ一度ご検討されることをおすすめします。
人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子
※ この投稿内容は、発行日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています