コラム
106万円の壁対策『社会保険適用促進手当』とは?
2023.10.06
● 9月下旬に「年収の壁・支援強化パッケージ」が発表されました。
扶養の範囲内でパートタイマーを雇用されている事業所では、関連してくる部分があります。
そこで、パッケージの概要から、「106万円の壁」対応に関連して『社会保険適用促進手当』についてお伝えします。
● 厚生年金保険の被保険者数101人以上の企業では、(1)週の所定労働時間が20時間以上あり、(2)所定内賃金が月額8.8万円以上、(3)学生でない、の3要件を満たすと、被保険者として自身が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する義務が生じます。
年収換算すると、約106万円となることから、「106万円の壁」と言われるようになりました。
このラインを超えることで、社会保険料が発生して手取りが減るのを避けようと働くことを控える人が増加。
そこで新たに発表されたのが、「年収の壁・支援強化パッケージ」です。
短時間労働者への被用者保険の適用を促進する観点から、被用者保険が適用されていなかった労働者が新たに適用となった場合に、事業主が本人に対し、給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」を支給することができるようになりました。
手当というと、給与に上乗せして支払うのが一般的ですが、「社会保険適用促進手当」は違います。
給与・賞与とは別に支給することになります。新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しない、というのが大きな特徴です。
ただし、対象となるのは標準報酬月額が104,000円以下の方です。
2023年度の厚生年金保険料率18.3%、健康保険料率(協会けんぽの全国平均)10.0%、介護保険料率1.82%の場合の本人負担分保険料相当額は、
標準報酬月額 88,000円 → 15.9万円
標準報酬月額 98,000円 → 17.7万円
標準報酬月額 104,000円 → 18.8万円
となります。
● たとえば、企業が年収106万円で働くパート社員に対して、適用拡大となって新たに社会保険に加入することになったとしましょう。
このままだと社会保険料が約16万円発生するため、単純な本人の手取りは90万円になります(税金を加味せず)。
そこで、本来は本人が負担しなければならない社会保険料約16万円を「社会保険適用促進手当」として支給したとします。
通常であれば、算定基礎となるパート社員の年収は122万円(106万円+16万円)となり、労使双方が負担しなければならない社会保険料は約18万円となります。
しかし、「社会保険適用促進手当」は算定から除外されるため、算定基礎となる年収は106万円のまま変わりません。
そのため労使双方が負担する社会保険料は約16万円となり、労使ともに約2万円分の負担軽減となります。
パート本人には「社会保険適用促進手当」がプラスされるため、手取りはほぼ変わらず負担を抑えられるというものです。
企業への支援としては、この手当などにより標準報酬月額・標準賞与額の一定割合を追加支給した場合、キャリアアップ助成金の対象となり得えます。助成金というと申請が大変なイメージがありますが、なるべく手続きを簡素化すると発表されています。
キャリアアップ助成金に新設される「社会保険適用時処遇改善コース」は、現在パブリックコメントが実施されており、公布は10月下旬になる見込みですが、2023年10月1日に遡及して適用されることになっています。
● 今回のパッケージでは、130万円の壁対策についても示されています。
従業員数100人以下の事業所は、こちらもぜひチェックしてください。
概要については、以下のブログで解説しています。
【年収の壁・支援強化パッケージとは?3つのポイント】
https://www.workstyle-blog.jp/20230927/package-151/
★無料メールマガジン「会社を成長させる人事の秘訣」のご登録はこちら
人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子
※ この投稿内容は、発行日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています