コラム
2022年10月から、職業安定法の改正ポイント
2022.08.10
こんにちは、社会保険労務士の佐佐木由美子です。
皆さんの会社において求人を募集する際、求人情報サイトばかりでなく、自社のホームページ等においても募集情報を公開されることはあるのではないでしょうか。
求職者が安心して求職活動をできる環境の整備と、マッチング機能の質の向上を目的として、2022年10月1日から改正・職業安定法が施行されます。
今回は、改正のポイントについて確認していきましょう。
労働者の募集を行う際のルールが変わり、「求人等の関する情報の的確な表示の義務化」と「個人情報の取り扱いに関するルールの整備」の改正が行われました。
ポイント1:求人等に関する情報の的確な表示義務
求人企業に対し、「求人情報」や「自社に関する情報」について的確な表示が義務付けられます。
対象となる情報は、広告や連絡手段を通じて提供される求人情報・求職者情報が幅広く対象となります。
たとえば、新聞・雑誌・その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出・頒布、書面、ファックス、ウェブサイト、電子メール・メッセージアプリ・アプリ等、放送(テレビ・ラジオ等)、オンデマンド放送等とても広範囲に及びます。
求人情報に公開に際しては、虚偽の表示・誤解を生じさせる表示はしてはなりません。
また、以下の措置を行うなど、求人情報を正確・最新の内容に保つ措置を講じなければなりません。
*募集を終了・内容変更したら、速やかに募集に関する情報の提供を終了・内容を変更する。
例:自社の採用ウェブサイト等を速やかに更新する。
*求人メディア等の募集情報等提供事業者を活用している場合は、募集の終了や内容変更を反映するよう速やかに依頼する。
*いつの時点の求人情報か明らかにする。
例:募集を開始した時点、内容を変更した時点 等。
*求人メディア等の募集情報等提供事業者から、求人情報の訂正・変更を依頼された場合には、速やかに対応する。
*「自社に関する情報」についても、以下のような表示をしないようにする必要があります。
【NG例】
・上場企業でないにも関わらず、上場企業であると表示する。
・実際の業種と異なる業種を記載する。
2022年10月1日以降も、現在と同様に、個別の応募者と最初に接触するまでの時点に、労働条件を明示しなければなりません。
労働条件の明示は、求人等に関する情報の的確な表示とは別に行う必要があります。
虚偽の表示ではなくとも、一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示は、「誤解を生じさせる表示」に該当します。
例えば、以下のような点に留意してください。
・契約社員の募集を「試用期間中は契約社員」など、正社員の募集であるかのように記載する
・フリーランスの募集と雇用契約の募集を混同する
・固定残業制の場合に基礎となる時間数を表示せずに基本給に含める
以下のような場合は虚偽の表示に該当する場合があります。
・実際に募集を行う企業と別の企業の名前で求人を掲載する
・「正社員」と謳いながら、実際には「アルバイト・パート」の求人であった
・実際の賃金よりも高額な賃金の求人を掲載
ポイント2:個人情報の取扱いに関するルール変更
求職者の個人情報を収集する際には、求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に、個人情報を収集・使用・保管する業務の目的をウェブサイトに掲載するなどして明らかにしなくてはなりません。
例えば、「募集情報等の提供のために使用します」といった表示や、グループ企業の採用選考に使用するにもかかわらず「自社の採用選考のために使用します」といった表示は認められません。
適切な例としては、「求人情報に関するメールマガジンを配信するために使用します」「面接の日程を連絡するために使用します」といったように、求職者の個人情報を収集する際には、求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に、個人情報を収集・使用・保管する業務の目的を明らかにしなくてはなりません。
なお、現在でも求人企業は以下の職業安定法の個人情報に関する規定の対象です。
・業務の目的の達成に必要な範囲内で、求職者の個人情報を収集・使用・保管すること
・業務上知り得た人の秘密を漏らさないこと
・求職者の個人情報をみだりに第三者に提供しないこと
2022年10月以降、求人活動を行う際には、くれぐれも上記の改正ポイントにご留意ください。
人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子
※ この投稿内容は、発行日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています