コラム
男女の賃金差異「情報公表」ルールの改正
2022.07.28
●こんにちは、グレース・パートナーズの佐佐木由美子です。
女性版骨太の方針2022に盛り込まれたこともあり、男女間の賃金格差の開示に関する話題が最近多く出ていましたが、2022年7月8日に女性活躍推進法の省令・告示が改正されました。
今回は、改正内容のポイントについてお伝えします。
●改正に伴い、女性の活躍に関する情報項目に、「男女の賃金の差異」が追加されることになりました。
労働者数301人以上の事業主は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績」に関して、以下のAからCの3項目の情報を公表する必要があります。
【女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績】
A:以下の8項目のうちから1項目を選択
1.採用した労働者に占める女性労働者の割合
2.男女別の採用における競争倍率
3.労働者に占める女性労働者の割合
4.係長級にある者に占める女性労働者の割合
5.管理職に占める女性労働者の割合
6.役員に占める女性の割合
7.男女別の職種または雇用形態の転換実績
8.男女別の再雇用または中途採用の実績
B:新設(★必須項目)
9.男女の賃金の差異
【職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績】
C:以下の7項目のうちから1項目を選択
1.男女の平均継続勤務年数の差異
2.10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
3.男女別の育児休業取得率
4.労働者の1月あたりの平均残業時間
5.雇用管理区分ごとの労働者の1月あたりの平均残業時間
6.有給休暇取得率
7.雇用管理区分ごとの有給休暇取得率
なお、常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主は、上記16項目から任意の1項目以上の情報公表が必要です。
●男女の賃金差異については、「全労働者」、「正規雇用労働者」、「非正規雇用労働者」の3区分で公表をしなければなりません。
派遣労働者は派遣元事業主において算出し、派遣先の事業主の算出対象の非正規雇用労働者から除外します。
計算方法は、賃金台帳をもとに、男女別の直近事業年度の賃金総額を計算し、雇用管理区分とごに人員数で除して平均年間賃金を算出します。
そのうえで、女性の平均年間賃金を男性の平均年間賃金で除して100を乗じたもの(パーセント)で算出します(小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までを表示)。
情報開示は、連結ベースではなく、企業単体ごとに行う必要があります。ホールディングス(持株会社)も、当該企業について開示を行わなければなりません。
なお、自社の実情を正しく理解してもらうために「説明欄」において、男女の賃金の差異以外の補足的な情報を任意で追加的に公表することができます。
【追加的な情報公表の例】~厚生労働省パンフレットより
・男女賃金格差の背景事情がある場合に追加情報として:
「女性活躍推進の観点から、女性の新卒採用を強化した結果、前年と比べて相対的に賃金水準の低い女性労働者が増え、男女賃金格差が全事業年度よりも拡大した」など。
●初回の「男女賃金の差異」の情報公表は、施行後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に行う必要があります。
たとえば、事業年度が4月~翌年3月の場合、2022年4月~2023年3月分を2023年4月以降(おおむね3か月以内)に開示することになります。
以下、ブログの記事もご参照ください。
男女間における賃金格差、開示義務でどう変わる?
人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子
※ この投稿内容は、発行日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています