コラム

2021年4月から変更 36協定届、押印廃止の注意点

2021.01.20

●行政手続きにおける「脱ハンコ」の動きが加速しています。

労働基準法施行規則等の一部を改正する省令により、2021年4月1日から36協定届における押印・署名が廃止されることになりました。

しかし、この取り扱いについては、誤解も多いようです。また、届出様式の一部に重要な変更点もあります。

今回は、そのポイントについて確認しておきましょう。

●36協定は、労働基準法で定められている法定労働時間(原則1日8時間・1週40時間以内)を超えて、従業員に時間外労働(残業)をさせる場合に締結・届出が必要となる労使協定です。

正式には「時間外労働・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法第36条に基づくため、36(サブロク)協定と呼ばれています。

36協定は、「時間外労働・休日労働に関する協定届」(様式第9号)を使用して届け出ます。

本来、36協定の「協定書」と「届出書」は、別の文書ですが、「届出書」に労働者の代表者が押印等をすることによって、「協定書」を兼ねることができます。

多くの会社では、「協定書」を作成することなく、「届出書」に押印等をすることで「協定書」を兼ねる方法で36協定を届け出ているケースが多いと思います。

2021年4月から廃止される押印・署名は、「届出書」についてであり、「協定書」を作成・締結している場合は、「届出書」の押印・署名が廃止されます。

しかし、「協定書」を作成せず、「届出書」が「協定書」を兼ねている場合は、「協定書」は引き続き合意がなされたことが明らかとなるよう労使の押印・署名が必要であるため、2021年4月以降も労使双方の署名・押印を省略することはできません。

●2021年4月以降、36協定届の押印・署名の廃止に伴い、様式に一部変更があり、以下2つのチェックボックスが設けられました。

(その1)
・協定の当事者である労働組合が事業場のすべての労働者の過半数で組織する労働組合である又は協定の当事者である労働者の過半数を代表する者が事業場のすべての労働者の過半数を代表する者であるかどうか

(その2)
・過半数代表者と締結した場合に、当該過半数代表者が管理監督者ではなく、かつ選出方法が適正であるか

協定当事者が過半数労働組合である場合は、(その1)のチェックボックスのみにチェックをすれば、形式上の要件に適合する協定届・決議届となります。

一方、協定当事者が過半数代表者である場合は、(その1)(その2)両方のチェックボックスにチェックしないと、形式上の要件に適合する協定届・決議届にはなりません。

新しい様式は、2021年4月1日以降に届け出るものから使用する必要があります。旧様式も当面の間は利用できますが、適格性チェックボックスの記載を直接追記するか、チェックボックスの記載を転記した別紙を添付しての追記・チェック等を行う必要があります。くれぐれもご注意ください。

●36協定は電子申請で届け出ることができます。

2021年4月からは電子署名・電子証明書が不要となり、e-Govでアカウント登録を行い、フォーマットに必要事項を入力することで届出が可能となります。

また、これまでは全ての事業場について1つの過半数労働組合と36協定を締結している場合のみ、本社一括届出が可能でしたが、2021年3月末から、事業場ごとに労働者代表が異なる場合であっても、電子申請に限り36協定の本社一括届出が可能となります。

電子申請で届け出た控え文書には受付印をもらうことが可能です。

対面・郵送での届出と比較して無駄を省くことができますので、積極的に電子申請を活用していきたいものです。

 

人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子

 

■2021年4月からの「36協定届」の様式はこちらからダウンロードできます

新様式第9号(限度時間以内で時間外・休日労働を行わせる場合(一般条項))

新様式第9号の2(限度時間を超えて時間外・休日労働を行わせる場合(特別条項))

 

※ この投稿内容は、発行日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています