コラム
在宅勤務時の事業場外みなし労働時間制について
2020.11.25
●コロナ禍によって、今年は在宅勤務を導入する企業が増えました。
これから冬が本格化して寒くなると、空気も乾燥して感染が増えることが懸念されます。
すでに第三波の到来とも言われており注意が必要ですが、そうなるとできる限り可能な方は在宅で仕事を…という流れにもなるでしょう。
こうした中で、時々「在宅勤務だといくら残業をしても残業代がつかない」といった話を耳にすることがあります。これはどうなのでしょうか。
●在宅勤務であっても、従業員の労働時間を適正に把握することは必要となります。
しかし、在宅となるとプライベートの生活空間でもあるため、時に合理的な労働時間の把握や管理が困難な場合もあり得ます。
労働時間を算定することが困難である場合は、一定の要件を満たす場合に限って、「事業場外みなし労働時間制」を適用することもできます。
在宅勤務における事業場外みなし労働時間制を適用するためには、次の3つの要件をすべて満たすことが求められます。(平16.3.5 基発0305001)
1.当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
2.当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
3.当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
テレワークといっても、会社によって従業員の自宅のみに限定されている場合もあれば、カフェやコワーキングスペースなど自宅以外の場所での業務が認められている場合もあります。
在宅勤務で事業場外みなし労働時間制を適用するためには、まず自宅であるという点がひとつ。
次に「使用者の指示により常時通信可能な状態」とは、従業員が自分の意思で通信を切断することが認められない状態を意味しており、在宅勤務者が使用者の指示に即応しなければならないような状態であることを言います。
さらに、使用者から随時具体的指示を受けていないということが要件なので、具体的な指示が常にあって即レスポンスが求められるような状況においては、みなし労働時間制を適用することはできません。
なお、業務の目的、目標、期限等の基本的な事項を指示することなどは、上記の具体的な指示には含まれません。
こうした要件を満たさないにもかかわらず、家で仕事をするから、みなし労働時間になる、という誤解をされている場合は、すぐに改めるべきでしょう。
在宅勤務だからといって、労働基準法等が適用除外されるわけではありません。
労働時間の管理については、くれぐれも留意しましょう。
ちなみに、在宅勤務制度の導入にともない、在宅手当の支給や通勤手当の見直しなどされている企業もあるのではないでしょうか。
ぜひこちらもご参考になさってください。
【在宅勤務に手当は必要か、手取りとの意外な関係とは?】
https://diamond.jp/articles/-/254351
人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子
※ この投稿内容は、発行日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています