コラム

新型コロナウイルス感染症と傷病手当金について

2020.03.24

●こんにちは、グレース・パートナーズの佐佐木由美子です。

 

新型コロナウイルス感染症により従業員が休業した場合、健康保険の傷病手当金が申請できるケースと、内容によっては申請できないケースもあります。

これに関連し、厚生労働省が健康保険組合に発出した「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について」が参考になりますので、その内容について確認していきましょう。

 

まず、被保険者である従業員が新型コロナウイルス感染症に「感染」しており、療養のため労務に服することができない場合について。

これは、他の疾病に罹患している場合と同様に、療養のため労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間について、傷病手当金の支給対象となります。

支給額は、休業1日あたり、原則として、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額となります。これは、従来通りの傷病手当金の考え方通りです。

 

では、従業員が発熱などの自覚症状があるために、自宅療養を行っており療養のために働けない場合は、どうでしょうか?

この場合についても、傷病手当金の支給対象となり得る、としています。問題は、労務不能期間をどう見るかです。

 

新型コロナウイルス感染症の相談・受診目安として、

 

・風邪の症状や37.5°C以上の発熱が4日以上続いている(解熱剤を飲み続けなければならないときを含む。)

 

・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある
※高齢者や基礎疾患等のある方は、上の状態が2日程度続く場合

 

のいずれかに該当する方について、「帰国者・接触者相談センター」に相談し、その結果、感染の疑いのある場合に、同センターから紹介された専門の「帰国者・接触者外来」を受診するよう示していることを踏まえると、上記のような発熱などの症状があるため被保険者が自宅療養を行っていた期間は、療養のため労務に服することができなかった期間に該当することとなる、と回答しています。

 

 

●それでは、もし「やむを得ない理由により医療機関への受診を行わず、医師の意見書を添付できない場合」はどうなるのでしょうか。

この場合、支給申請書にその旨を記載するとともに、事業主からの当該期間、被保険者が療養のため労務に服さなかった旨を証明する書類を添付すること等により、保険者において労務不能と認められる場合、傷病手当金を支給する扱いとされることが明らかにされました。

つまり、医師の意見書が不要になるという例外的な取り扱いを示しています。

 

では、本人には自覚症状がないものの、家族が感染し濃厚接触者になった等の事由において、本人が休暇を取得した場合には傷病手当金は支給対象となるでしょうか。

 

これについては、あくまでも傷病手当金は、労働者の業務災害以外の理由による疾病、負傷等の療養のため、被保険者が労務に服することができないときに給付されるものであることから、支給対象とはなりません。

 

●新型コロナウイルス感染症に関連する企業対応として、在宅勤務などの働き方や休業問題、実際に従業員が罹患した場合など、様々な問題が想定されます。

 

従業員が健康上の理由から、働けない状態になったときの傷病手当金の活用についても検討し、従業員が安心して休めるように配慮いただければと思います。

 

人事労務コンサルタント/社会保険労務士
佐佐木 由美子

 

※ この投稿内容は、投稿日時点において明らかとなっている法律内容に基づき記載しています