コラム
外国人材の雇用と労務管理のポイント
2019.08.28
●こんにちは、グレース・パートナーズの佐佐木由美子です。
労働人材の不足が深刻化する昨今、2019年4月1日から改正・入管法が施行され、外国人の受け入れが拡大しています。
今回の改正で創設されたのが、「特定技能」の在留資格です。
これには2種類あり、「特定技能1号」は、次に掲げる特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験と技能を要する業務に従事する在留資格で、「特定技能2号」は、建設業及び造船・舶用工業に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向け在留資格です。
【特定技能1号における特定産業14業種】
建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電気電子情報関連産業
特定技能1号は、在留期間が通算で上限5年までと定められており、家族の帯同は基本的に認められていません。技能や語学力については、試験等で確認されるものとなっています。
これに対し、特定技能2号は、在留期間に上限はなく、要件を満たせば配偶者や子の帯同が認められます。
●在留資格の確認
外国人を雇用する場合に、労務管理上において必ず確認すべきことは、在留資格の確認です。
具体的には、中長期滞在する外国人には携帯が義務付けられている「在留カード」を提示してもらいます。
在留資格については、上記の「特定技能」が今年度から創設されましたが、2019年6月現在において、入管法上の在留資格は34種類もあります。
在留カードには、氏名、住所、生年月日、国籍等のほか、在留資格の種類と有効期間も記載されていますので、必ず確認するようにしましょう。
適切な在留資格のない外国人を雇用した場合、会社が不法就労外国人を雇用したとみなされ、不法就労助長罪(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金)に問われることがあります。
なお、中長期在留者の方が初めて日本に入国したときは、住居地を定めた日から14日以内に住居地の市区町村で住居地を届け出る必要があります。
その後住居地を移転した場合も同様です。これは本人が行うべきことですが、きちんと本人が対応しているか確認しておきたいところです。
●労働条件の明示
雇い入れ時には、労働基準法において一定の労働条件を書面で交付することが義務付けられています。これは、日本人と同様です。
労働条件の内容については、後からトラブルとならないようにきちんと説明をしましょう。
●社会保険手続き
入社に際しては、資格取得要件に該当する場合、雇用保険と健康保険・厚生年金保険の資格取得手続きを行う必要があります。
雇用保険においては、雇用対策法28条により、外国人の雇い入れ時と離職時に、氏名・在留資格などをハローワークに届けることが義務付けられています。
実務上は、雇用保険資格取得届の備考欄に記載することで足りますので、忘れないようにしましょう。届出を怠ると、30万円以下の罰金が科されることもあります。
社会保険については、日本人と異なる点として、適用除外となる可能性があることが挙げられます。
社会保障協定締結国で社会保険に加入している外国人は、本国で発行された「適用証明書」を年金事務所に提出することにより、健康保険・厚生年金の加入免除を受けることができます。
なお、健康保険も免除されるか厚生年金だけ対象となるかは、当該国との各協定の内容によって異なるので注意が必要です。
厚生年金保険の手続きに関しては、資格取得届と合わせてアルファベット氏名届を提出する必要があります。
ところで、外国人においても、マイナンバーは交付されます。日本で初めて住民票が作成されると、2~3週間程度で住所地に封書が届きます。
法務省入国管理局で交付される在留カードと、マイナンバーの通知カード(写真なし、紙製)や個人番号カード(申請によって交付される写真つきICカード)はまったく違うものですが、外国人にはわかりにくいので、誤解のないように説明を行い、会社としてもきちんと手続きができるように対応しましょう。